読書の記録と雑談
眠れぬ真珠/石田衣良
2009年06月30日 (火) | 編集 |
4101250529眠れぬ真珠 (新潮文庫)
石田 衣良
新潮社 2008-11-27

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版画家の咲世子は17歳年下の映像作家・素樹との恋におちる。
人生の後半に訪れた恋は、愛し合う喜びと別離の予感を咲世子にもたらした。


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版画家としてはそれなりに成功した人生を送っている咲世子ですが、更年期障害に悩まされたり、一人で生きていくことに不安を感じたり、若い頃とは違ってしまった様々なことに悩まされています。
私は(多分)まだ更年期障害を経験してはいないと思うのですが、こんなに悩まれると不安になってきますね。
そんな中、カフェのウエイターとして働いていた映像作家の素樹と出会い、二人は恋におちて行きます。
17歳年下の男性との恋。
恋に年齢なんて関係ないと思いつつ、こういう歳の差カップルというのは年上の方が悩むんですよね。
若い子はあまり気にしないんですよ(^^;)
私も別に歳の差があっても良いのではないかと思いながら読んでいたのですが、咲世子が60歳の時に素樹が43歳・・・と言われると、やっぱ無理かも、なんて思ってしまいます。
まあ本人次第なんですけど。

そして咲世子は、いつか素樹と別れなくてはならないと承知しながら素樹と恋人同士になるわけですが・・・これって結構しんどいですよね。
素樹は映像作家なのですが事情があってその世界から離れていました。
でも素樹の住む世界は映像の世界で、その世界に戻してあげることこそ自分の役目だと咲世子は思っていて、実際そうしてしまいます。
もちろん本当は泣きながら、でも表面上は恋で遊ぶ大人の女を装って。

もし私が咲世子の立場なら同じことをしたかもしれません。
でもこういうのっていつもちょっと思ってしまうんですよね。
相手の為に、って理由は本当に良いのかなって。
結果的には良いのかもしれないけど、相当相手を苦しめる結果になることだってないとは言えない。
私は話し合いの上での同意、を望むなぁ。
その結果別れを選ぶならしょうがない。

恋をするのに年齢なんて関係ない、と思わせてくれるお話でした。
が、45歳になっても年下男性に恋されるような素敵な女になるのはかなり難しそう。
それを考えると私はがっかりします(^^;)
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2009/06/30 22:34 | 石田衣良 | Comment (2) Trackback (0) | Top▲
ぬしさまへ/畠中恵
2009年06月20日 (土) | 編集 |
4101461228ぬしさまへ (新潮文庫)
畠中 恵
新潮社 2005-11-26

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長崎屋の病弱な若旦那・一太郎の周りには妖怪がいっぱい。
そして難事件もいっぱい。
幼馴染の作った饅頭を食べたご隠居が死んでしまったり、新品の布団から鳴き声が聞こえたり。
妖怪達を手下にして、一太郎は次々と謎を解いていく。


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しゃばけシリーズ第二弾。
病弱な若旦那・一太郎と、感覚が人間とはちょっとズレている妖怪達が難事件を解決していく・・・あれ?これも推理小説なのかな(笑)
殺人事件が出てきても何だかおおごとに思えないのは、果たして良いのか悪いのか、って感じです。
一太郎のキャラクターが物語を和ませてしまうのかもしれません。

病弱な跡取り息子は、周囲から甘やかされ放題です。
お金持ちだから生活に苦労はしないし。
でもその環境に一太郎が甘えていないトコが良いんですよね。
甘やかされ過ぎれば閉口し、身体が弱くても寝てばかりの生活を抜け出そうと頑張ってる。
店の跡取りとしての意識はちゃんと持ってるし。
威張らず誰にでも優しいからみんなが甘やかしちゃうんでしょうね〜。
妖怪達まで(笑)

人間の力では解決できないような事件でも、妖怪の手を借りれば証拠はどんどん集まります。
それに一太郎の推理力は相当なもの。
事件の先がわかるわけではないのに、何となくハラハラドキドキしないんですよね(^^;)
犯人誰かな〜とか、そんなことを考えるより、一太郎や妖怪の事件解決の過程をただ楽しんでしまうお話でした。
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2009/06/20 11:52 | 畠中恵 | Comment (2) Trackback (0) | Top▲
イルカ/よしもとばなな
2009年06月09日 (火) | 編集 |
4167667045イルカ (文春文庫)
よしもと ばなな
文藝春秋 2008-11-07

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恋人と初めて結ばれた後、キミコは東京を離れ、傷付いた女性達が集う海辺のお寺でしばらく過ごす。
そこでは忙しいけれど静かな生活があった。
やがてそこを出て友人の別荘に滞在していたが、思いがけない形で自分の妊娠を知ることになった。


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作者が自分の体験を物語として書いた作品らしいです。
読み始めてすぐに、これは自分の話だな、と気付いてちょっとがっかりしちゃいました。
自分の体験談だとエッセイっぽくなるんですよね。
実は私は女性作家のエッセイが苦手です。
たまたま読んだ数冊がどれも好きじゃなかったのでトラウマみたいになってるんですよ。
ついでに言うと、可愛いと思って手にとった表紙イラスト。
確かに可愛いのですがよーく見ると何だかグロい(笑)

そんな印象で読み始めていたので、やっぱり最初のうちはつまらなかったのですが、キミコが自分の妊娠を自覚した頃から、何となくあったかい気持ちで読むことが出来ました。
といっても私は妊娠の経験もないし母になったこともないので、共感できるわけではないんですけどね。
自分の中にもうひとつ命が宿るということは、意識せずに人間を変化させるものなのだという感じがしました。
少しだけ、自分の子供がいたら良いなぁなんて思ったり。

でも、このキミコという女性、私は苦手です。
こういう生き方をしている女性もいるんだなと思うし、羨ましい部分もありますが、どこか難しいというか何というか(^^;)
誰の中にもある正直な気持ちを上手に言葉に出来ているのかもしれませんが、ちょっと付き合っていて寂しい気がしちゃいます。
ホントにこんな女性いるのかな?って思う部分もあったし。
だからちょっと遠くから眺める気持ちで読んだ本だったかもしれません。

それにしても、女性作家さんって結構自分のことを赤裸々書きますよね。
体験談はともかく、こういう表現って恥ずかしくないのかなって時々思うことがあります(^^;)
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2009/06/09 23:18 | その他(や行) | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
幽霊人命救助隊/高野和明
2009年05月31日 (日) | 編集 |
4167717263幽霊人命救助隊 (文春文庫)
高野 和明
文藝春秋 2007-04

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浪人生の裕一、ヤクザ組長の八木、中小企業経営者の市川、フリーターの美晴。
自殺した4人の幽霊は、神様に地上で100人の自殺志願者の命を救えと命令された。
成功すれば天国に行かれる。
地上に戻った彼等は、救助作戦を展開した。


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かなりのお勧め本です。
お勧め本を誰かに聞かれたら、私は真っ先にこの本を挙げたいなぁ。
とにかく色んな要素の詰まった作品でした。

気が付くと奇妙な崖を登っていた裕一。
ようやく頂上に辿り着くと、2人の男と1人の女がいました。
他には何にもない世界。
そこで裕一は思い出します。
自分が首を吊って自殺したことを。
そこにいた男女も、それぞれ時代も理由も様々ですが、自殺者の幽霊でした。

そこにいきなり神様が現れます。
ヘルメットとゴーグルを装着し、ジャンプスーツを来た神様がパラシュートで登場って、ホントに神様?って感じです。
ホントに神様だったんだけど(笑)
4人が天国だと思っていた崖の上は天国ではなく、彼等は天国に行く為に地上に降りて100人の自殺者の命を救うという使命を受けました。
でなければ永遠に何もない崖の上にいなければならないから。

そして4人の人命救助作戦が始まるわけです。
幽霊だから人の目には見えません。
幽霊同士は普通に接することが出来るけど、物を動かすこと出来ないし、ドアを通り抜けることは出来ません。
不死身だけど痛みは感じます。
人間に重なることでその人の心を知ることが出来ますが、同時にその人の苦しみや心身の痛みも共感してしまいます。
そんな4人に、神様はいくつかの道具を貸してくれました。
携帯電話、メガホン、ヘッドセット、ゴーグル・・・が主だったかな?
そして幽霊達の服装はオレンジのレスキュー隊ユニフォーム。
アンバランス、というか、かなり好き勝手な設定が面白いなぁと思いました。

自ら命を捨てた4人が、他人の命を救う為に奔走します。
彼等が出会う自殺志願者達の心の内は、想像以上に辛いものでした。
4人は自分達に重ねながら、あるいは新たな発見をしながら人間を救っていきます。
そして、自分達が無駄にした命の重さに気がついたのではないでしょうか。
本当は死ななくても良かった、自分達に。
4人は救助の中で、自分の問題にも向きあい、乗り越えたのだと思います。

社会の裏に潜む問題、人間社会の不条理や不平等、親子関係、人間関係、色々なものの現実が見えてきます。
悲しかったり腹立たしかったり・・・だけど打開策はきっとどこかにあるのだという気もしました。
辛いことに変わりはないかもしれなくても、命を捨てる前にほんのちょっと視点を他に向ければ何かが違ってくるのかもしれません。
死にたいほど辛い時に、それは難しいのかもしれないけど・・・。

と、重い感じのテーマなのかもしれませんが、結構笑える部分もあるんですよ。
それぞれに自殺するほどの痛みを持っている4人ですが、個性的なキャラが集まっていて面白いです。
生きていた時代も環境も違う4人のジェネレーションギャップとか、ちょっとオトボケな行動とか。
ビルの屋上に取り残され、もう死ぬことはないからと飛び降りて(正確には八木に突き落とされて)地面で折り重なって潰れちゃうトコとか、幽霊が出そうだ、と思っている人間の横で「もう出てる」なんて呟いちゃうトコとか(^^)
車に幽霊寿司詰め状態とかも、想像すると笑っちゃいます。

ラストはやっぱり泣いちゃいました。
いえ、その前から結構泣かされてたかな(^^;)
命の重さを知り、仲間の大切さを知った4人の幽霊達。
お互いの存在の大切さを想う彼等の気持ちが切なかったです。

決して他人事ではない現代社会の問題。
自ら命を絶つ人がなくならない世界。
扱っているテーマは重いですが、暗くならず、面白く読めると思います。
そして必ず何か得るものはあるし、知るべきこともある筈です。
今辛い人も、そうでない人も、是非読んでもらいたい本でした。
命さえあれば、可能性はあるのですから。
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2009/05/31 11:19 | その他(た行) | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
さがしもの/角田光代
2009年05月13日 (水) | 編集 |
4101058245さがしもの (新潮文庫)
角田 光代
新潮社 2008-10-28

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病床の祖母に頼まれた本を探し求めて奔走する少女の日々を描いた「さがしもの」。
初めて売った古本と思わぬ再会をする「旅する本」。
等、九つの本の物語。


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これといった大事件があるわけではありませんが、主人公達の日常の中での本とのかかわりを描いた短編集です。
あまり面白いとは思わずに読み進めていたのですが、読み終わった頃には本を読むことがとても素敵なことに思えていました。
私も早いペースではありませんが本を読むのは好きです。
そんな自分が少し誇らしく思えてくるから不思議です(笑)

本にまつわるいくつかの物語。
主人公達は本が好き(という意識を持っていたのかは微妙ですが)でたくさんの本を読みます。
日常の中に当たり前に存在して、本というのは思った以上に身近な存在な気がしました。
本が中心というわけではなくさりげなくいつも傍にある感じ。
だから普通に読み終わってしまったのかも。

実を言うと、この本の中で一番好きだったのはあとがきのエッセイだったりします(^^;)
一番共感できる部分が多かったように思うので(私には、ですが)
本は、何度も読み返すとその都度印象も変わると言います。
子供の頃理解出来なかった本も、大人になると理解できることもあるとか。
その時々のその人の成長や経験によって、世界が変わってくるってことかな。
私は小説本を読み返すということはほとんどしません。
漫画なら気に入れば何度も読みますけどね(^^;)
小説はせめて手元に置く程度。
それもそのうち手放してしまいます。
読み返していたら、何かが違ったかもしれませんね。
作者の方の例として「星の王子さま」があげられていました。
小学生の頃はつまらなかったこの本が、高校生になって読んだらスゴイと思ったらしいです。
「星の王子様」は私も読みましたが全く理解不能でした。
あらためて読んでみようかな、と何となく思ってます。

とりあえず、これからもたくさん本を読んでみようと思わせてくれる本でした。
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2009/05/13 23:50 | 角田光代 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
赤い帆船/西村京太郎
2009年05月04日 (月) | 編集 |
4334726194赤い帆船(クルーザー) (光文社文庫)
西村 京太郎
光文社 1998-06

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ヨットで11ケ月間の単独無寄港世界一周を達成した内田洋一は一躍現代の英雄になったが、それから2ケ月後に殺されてしまう。
一方、内田の同級生であり同じヨットマンの村上邦夫は嫉妬と羨望に苛まれていた。
しかし村上には時間と距離の鉄壁のアリバイがある。
十津川警部補はこのアリバイを持つ容疑者に挑んだ。


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十津川警部の警部補時代のお話です。
この作品が十津川警部のデビューになるのだとか。
あとがきでそれを知ったのですが、ちょっと感動しちゃいました(笑)
まだ30歳で独身で、周囲を固める刑事達も現在とは全く違います。
十津川警部も血気盛んな若者という感じで、今の落ち着きも温厚さも少ない印象でした。
性格の説明はなしに行動だけで人物の人間像やその変化を伝えられる、というのはやっぱり凄いと思います。

今回の舞台は海の上。
江ノ島からタヒチまでの6000マイルヨットレースの様子に並行して事件が解決されていきます。

ヨットでの単独無寄港世界一周を果たした内田洋一が殺されたとわかり犯人を追う十津川警部補ですが、なかなか犯人が絞れません。
まだ若い十津川警部補が推理をことごとく覆されていく様子は、ある意味新鮮で楽しかったかも(笑)
そしてようやく村上邦夫に絞り込まれるわけですが、村上には内田が殺された時間はヨットレースに参加していて海の上にいたという鉄壁のアリバイがありました。
犯人だという確信はあるもののアリバイが崩せない。
村上の用意周到な殺人計画に、かえって感心してしまったほどです。
そこまでの殺意というのが怖くもありますけどね。
人間って、時間をかけて計画しているうちに何処かで冷静になれないものでしょうか。

村上のアリバイ崩しの過程も読み応えがありましたが、レースに参加したヨットマン達の航海風景もとても面白かったです。
私は海上を舞台にした船のお話はあまり読んだ記憶がないし(子供の頃読んだ童話くらい?)、船の知識も全くありませんが、それでも何だか読んでいて面白かったんですよ。
殺人事件抜きにして、普通に航海ものの小説だったとしてもそれなりに楽しく読めた気がします。
十津川警部、学生時代はヨットマンだったんですね。
ちょっと意外(^^;)
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2009/05/04 23:55 | 西村京太郎 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
とっても不幸な幸運/畠中恵
2009年04月20日 (月) | 編集 |
4575511870とっても不幸な幸運 (双葉文庫 は 18-1)
畠中 恵
双葉社 2008-03-13

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ひねくれ者だけど料理自慢で世話焼きのオーナー店長がいる「酒場」。
曲者だらけの常連客が集うこの店に、ある日「とっても不幸な幸運」という缶が持ち込まれた。
この缶を開けると見えないものが見えたり、聞こえる筈のないものが聞こえたり。
そしてそこから謎が始まる。
缶を開けた人間にもたらされるのは災いなのか幸せなのか。


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テレビドラマがきっかけで「しゃばけ」シリーズに興味を持ちました。
だから畠中さんというと時代小説のイメージだったのですが、現代ものも書くんですね。
この1冊はちょっと驚きで、ちょっと新鮮でした。
そしてかなりお気に入り。
登場人物達はちょっと物騒なオヤジが多いけど、とても人情味のあるお話です。

「酒場」という店名の酒場のオーナー店長は喧嘩っぱやいひねくれ者。
けれど一人娘には甘く、料理上手の世話好き店長です。
常連のみが集うこの酒場は、クセのある男達がいっぱい。
酒場のくせに女っけはまるで無し。

そこにある日、店長の一人娘・のり子が「とっても不幸な幸運」という缶を持ち込みます。
この缶を開けると見える筈のないものが見え、謎が生まれます。
その謎を解決する為に否応なしに向き合わなければならなくなる現実。
でもその現実を乗り越えた時、穏やかな心が残ります。
「とっても不幸な幸運」という理由は何となくわかる気がするなぁ。

謎解きには店長はじめ、店の常連たちが協力してくれます(賭けをしたりと面白半分な面も多々ありますが、これがこの店の常連達の特徴です)
よってこの缶を開けることによってもたらされる謎と困難は誰もが承知している筈なのに、何故か次々に持ち込まれる缶。
開ける人間が違うことで物語も様々なのです。

私が一番好きだったのは、酒場の若きウエイター・健也のお話。
記憶の一部を失っていることに気付き、その記憶を思い出すと同時に過去の傷も思い出してしまいます。
店長はかなり突き放した態度を取りますが、本当は健也をとても心配している。
その不器用な優しさが何とも言えませんでした。

誰もが何かしら心にひっそりと抱えているものがあるのかもしれません。
そのままにしておいても人生を生きていけるけど、もしかしたら向き合った方が未来が開けるのかもしれない。
そしてこの缶はかなり強制的に向き合わせてくれます(^^;)
でも結果的には幸運と思えても、そこにたどりつくまでは結構しんどいわけで。
もし目の前にこの缶があっても私は開けたいとは思いません(多分)
酒場の常連さん達も同じなのに、何故か開けてしまうんですよねー。

「とっても不幸な幸運」の缶は100円ショップに売っているそうですよ(物語の中では)
その辺のお店で見かけたら・・・買いますか?
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2009/04/20 23:27 | 畠中恵 | Comment (0) Trackback (1) | Top▲
陰日向に咲く/劇団ひとり
2009年04月11日 (土) | 編集 |
4344411684陰日向に咲く (幻冬舎文庫)
劇団ひとり
幻冬舎 2008-08

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ホームレスを夢見る会社員、売れないアイドルを一途に応援する青年、場末の舞台に立つお笑いコンビ・・・等々。
陽の当たらない人生を送る彼等に、時に一筋の光が差す。


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芸能人が書いた本には関心がなかったし、芸人さんがあまり好きではなかったので手に取ることはなかった本ですが、評判が良いので読んでみました。
最近芸人さんもちょっと好きになってきたし(笑)

5つの短編の登場人物達が、どこかで繋がっているという構成になっています。
人生どこで誰と関わっているかわからない感じが面白かったですね。
本職の作家さんではないのにちょっと凄いな、とは思いました。
だた、最初は登場人物達の絡み合いもストーリーも次はどうなるのかとわくわくしながら読みましたが、後半は何だかわかり難くなってしまった気がします。
時代が過去に遡ったせいもあると思うのですが、一番最後に収録されていた「鳴き砂を歩く犬」はイマイチ好きになれませんでした。
そして全編を通して関わっていたように思うホームレスのおじさん(もしかして別人かもしれませんが)
この人、良い人なのか(笑)?・・・という疑問が今だに残ってます。

この本は、さらっと読むと楽しいんじゃないかなぁ。
私は、確かに最初は楽しく読んでたんですよ。
でもいざ感想を書こうと思ったら、結構つっこみどころが見つかってしまったんですよね。
都合の良い展開が多すぎる(笑)
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2009/04/11 00:00 | その他(か行) | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
魔王/井坂幸太郎
2009年04月03日 (金) | 編集 |
4062761424魔王 (講談社文庫)
伊坂 幸太郎
講談社 2008-09-12

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弟の潤也と二人暮らしの安藤は、ある日、自分が念じればそれを相手が必ず口に出すということに偶然気付く。
そしてその能力を携え、安藤はある男に近付くことを試みた。
五年後の潤也の姿を描いた「呼吸」とともに綴られる、日常生活の中にある危うさ。


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嵐の大野君主演で放送されていたテレビドラマ「魔王」とは全く別物だったのね(^^;)
ドラマは見ていなかったのですが、時々見かけたCMのイメージとこの物語があまり重ならなくて不思議に思ってたんですよ。
どうりで、って感じです(笑)
まあ、別に良いんですけど。

普通の会社員である安藤は、ある日、自分が念じた通りの言葉を他人に喋らせる能力がある事に気付きます。
色々試した結果、制約はかなりありますが、条件さえ合えば確実な能力。

その頃、世間で話題になっていたのは犬飼という議員でした。
他の政治家とは違い、自分の保身は考えずはっきりと物を言う犬飼は国民に人気がありました。
犬飼の支持者が溢れる中、安藤はそんな世の中に不安を持ちます。
自分で考えることをせず、世の中の流れに乗るだけの人々。
犬飼によってやがて独裁政治が行われるかもしれない恐怖に誰も気付かないで、彼の言葉に陶酔している日本。

何となく、言わんとすることはわかるような気がしました。
多数決で多い方に賛成した方が無難だとか、あの人がそう言うなら自分もとか、世の中の流れがそうだからとか、そんな理由で判断していることって意外と多いのかもしれません。
そうしてやがて考えることをしなくなり、独裁者に従うだけの集団になってしまう可能性がないとは言えないかも。
安藤はそんな風潮を危惧し、犬飼失脚を狙って近付きますが望みは叶いませんでした。

そして「呼吸」という物語で、弟の潤也に視点が移ります。
潤也は兄のことが大好きでした。
良き理解者でもあったと思います。
日常生活の中で彼も自分の持っている不思議な能力に気付きました。
兄とは全く別の種類のものなんですけど。
そして彼もまた兄と同じく、孤独な戦いに挑み始めます。
人々を救う為に。

安藤兄弟には好感が持てますが、物語自体は特別に面白かった、という感じではなかったかも(笑)
ただ、世の中の流れが何故か現実のように感じられる不思議さの方が面白かったです。
この物語の初出は2004年、文庫化が2008年、私が読んでいるのが2009年。
当然時代背景は変わっている筈なのに、現在の社会情勢とあまに似ていることに驚きました。
指摘される風潮も、何だか思い当たることばかり(笑)
もしかして世の中は特に何も変わっていないのか?それとも繰り返しているだけなのか?なんてことまで考えてしまいました(^^;)
まあ、私にそんな難しいことはわかりませんけどね。

洪水が起きた時、それでも流されずに立ち尽くす1本の木になりたい、とは潤也の言葉。
感動したし私もそうありたいと思う反面、私はいかに怪我なく安全な場所まで流れていけるかを考えてしまいそうな気がします(悲)

ところで、私はこの物語の中に殺人犯がいると思うのですが(多分だけど)、やっぱりこの物語でもその人物は裁かれないのかな?
まだ続編があるようなのでいずれ機会があれば読んでみたいです。
「魔王」とはいったい誰を(何を?)指すのか、今だに私には不明だし。
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2009/04/03 23:42 | 伊坂幸太郎 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
ホームドラマ!
2009年03月20日 (金) | 編集 |
4812416884ホームドラマ! (竹書房文庫)
岡田 恵和
竹書房 2004-07

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東京郊外の一軒家に暮らす仲の良い9人家族。
しかし彼等には血の繋がりはない。
1年前のバス事故で大切な人を失った者同士が集まって暮らしていた。
大きく報道された事故はあっという間に風化したが、彼等の心の傷は癒えることがなかった。


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2004年にTBS系列で放送されたドラマのノベライズです。
主演が堂本剛さんだったので見ていて、その当時にこの本も購入していたのですが、今頃になって持ち出して読む気になりました。
大筋は覚えているつもりだったものの、忘れている部分や新たな感動が意外とあるものです。
ラストなんてすっかり忘れてしまってました(^^;)

とにかく、こんなに泣ける物語だったっけ?という感じでした。
バス事故で大切な家族を失うところから始まるのだから悲しいのは当然なのですが、全編を通してところどころ泣けるシーンがあって、職場で読んでいるのは結構大変でした。
ホントの家族ではない家族の物語なのに、そこにあるのはホントの家族と何ら変わらない優しさと愛情です。

いくら仲の良い相手でも、一緒に生活することは難しいと言います。
それまで生きてきた生活習慣が全く違いますからね。
それでもこの9人は、そこを自分のホームだと感じ、お互いを家族として尊重し大切にしています。
同じ傷を持っている者同士・・・というのもあったかもしれませんけどね。
共有する想いがあるというのは、人の心を繋げるのに役立つのかもしれません。
それが彼等の場合とても悲しい出来事だったというのが切ないですが・・・。

自分の家(家族)があるってとても心強いですね。
普段はあまり意識しなくても、帰る場所があるってありがたいことだと思います。
誰かを大切に想う気持ちさえあれば、誰でも家族になり得るのかもしれません。
性格も環境もまるで違う彼等が新たに築いた家族。
現実には多分ありえないだろう設定ではありますが、誰かを大切に想う気持ちに触れることが出来る優しい物語だと思います。

もう一度、ドラマを見たくなっちゃいました。
多分ビデオ録画はしてたと思うんです。
でも探し出すのが大変(^^;)
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2009/03/20 09:46 | ノベライズ | Comment (0) Trackback (0) | Top▲