読書の記録と雑談
月の裏側/恩田陸
2008年10月06日 (月) | 編集 |
4344402626月の裏側 (幻冬舎文庫)
恩田 陸
幻冬舎 2002-08

by G-Tools


九州の水郷都市・箭納倉。
ここで老女の失踪事件が相次いだ。
けれど彼女達は記憶を失くしてはいるものにじきに戻ってくる。
事件に興味を持った元大学教授・協一郎らは「人間もどき」の存在に気付いた。


++++++++++

すごく怖いお話だと思いながら読んでいたのに、最後にはその恐怖が消えてしまいました。
それが何だか怖いんですけど・・・(^^;)

元大学教授の協一郎はしばらく離れていた箭納倉に戻って暮らしています。
地元で起きている老女失踪事件に興味を持ち、それを調べるのに協力してもらうために呼び寄せたのが元教え子で音楽プロデューサーの多聞。
そこに新聞記者の高安と協一郎の娘・藍子が加わり、4人で事件の真相を探り始めます。
探している犯人が人間ではないところが恩田さんらしいんですよね(^^;)

雨雲に覆われいつも曇っている箭納倉の町は水郷都市と言われるだけあってそこかしこに掘割があります。
水と共に存在する町。
だけどその水の中に潜む大きな力の存在。
いつも曇っているか雨が降っているかの町の背景と相まって、とても不気味な設定になっていました。

失踪して戻って来た人達は「盗まれて」いました。
その間の記憶を失くしている以外は一見何の変化もありませんが、でも戻ってきた時には既に人間ではなく「人間もどき」なんです。
それに気付いている人も多いのに、皆それを受け入れているんですよね。
大きな存在の一部でありつつ独立していたい、そんな人間の欲求を満たしてしまうからなのかな。
自分が人間ではなくなってしまうことがわかっているのに。

自分が人間ではなくなってしまったと知って、私は平気でいられるかな?
皆と同じように当たり前に受け止めて今後を過ごしていくのでしょうか?
パニックに落ちいる普通を持っていたいと思う反面、何事もなく過ごしていくことを望んでもいる自分がいます。

すぐそこにある見えているもの。
だけどその裏側にあるものが見えてはいないことには気付き難いものです。
そこに何があるかなんて考えてもみないですよね。

今ここにいる私は「人間」なのか「人間もどき」なのか?
あまり深刻には考えていませんが(^^;)とりあえずそんなことは思ってしまいます。
---------------------------------------------------------------

2008/10/06 23:30 | 恩田陸 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
間宮兄弟/江國香織
2008年07月31日 (木) | 編集 |
4094082182間宮兄弟 (小学館文庫 え 4-1)
江國 香織
小学館 2007-11-06

by G-Tools

酒造メーカーに勤める兄・明信と、学校職員の弟・徹信。
いい人だけど恋愛対象としてはありえないと女性達から評される間宮兄弟は、マイペースに二人暮らし。
そんな兄弟も恋愛をし、彼等に関わる女性達は兄弟に興味を持ち始める。
モテない男達の日常の物語。


++++++++++

女性達からは「ありえない」と評価されてしまう、モテない間宮兄弟。
彼等の描写のどこをとってもスマートさはなく、もさっとした二人の男の姿しか浮かびません(笑)
でも彼等の良いところはモテない自分達を自覚してはいるけれど、それを必要以上に悲観してはいないところ。
真面目だし多趣味だし親孝行。
好きな女性が現れればアプローチをするくらいには行動力があります。
他人から見れば地味だと思うような生活も二人は凄くそれを楽しんでいるんですね。
周囲の目を気にせず自分のスタイルや考え方を持っていること。
それは意外と簡単ではないことです。
だから二人はきっとカッコイイと思うのだけど、外見とイメージがそう思わせてはくれないんだろうなぁ(^^;)

そんな彼等でも恋愛はするし女性達との繋がりもあります。
明信に紹介しようと徹信が連れてくる教員の依子。
二人が通うレンタルビデオショップのアルバイト店員の直美と妹の夕美。
明信の同僚の妻・沙織。

恋愛がらみで知り合うわけですが、なかなかそう上手くはいきません。
でも間宮兄弟を知るとその人柄に惹かれて誰もが好意を示すようになります。
人間外見で判断してはいけないということですね。

間宮兄弟は、きっと今も二人仲良く、好きなように一緒に暮らしているような気がします。
いつか彼等にも変化はくるのだろうけど、その時はきっとそれなりになるのでしょう。
誰にでもありえそうな日常生活。
平凡で時々個人的レベルでの大事件が起きて。
そういうのって悪くないかも、って思えるお話でした。

彼等のどちらかを恋人にしたい、と思うのではなく、彼等とお友達になりたいな、と思いました。
物語の中で間宮兄弟と知り合う女性達と同じ感情が私の中にもあるみたいです(笑)
---------------------------------------------------------------

2008/07/31 00:00 | 江國香織 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
狐笛のかなた/上橋菜穂子
2008年07月25日 (金) | 編集 |
4101302715狐笛のかなた (新潮文庫)
上橋 菜穂子
新潮社 2006-11

by G-Tools


12歳の小夜は、人の心が聞こえる「聞き耳」の力を母から受け継いだ。
ある日の夕暮れ、小夜は犬に追われていた子狐を助ける。
狐はこの世と神の世との境にある世界に住む霊狐・野火。
主に命を握られ、主の使い魔として生きることしか許されない運命にあった。
そして、小夜と野火は隣国との争いに巻き込まれてゆく。


++++++++++

この物語、本来は児童文学なんだそうです。
でも大人も十分楽しめるものでした。

時代背景が曖昧で、人間に化ける狐が出てくるこのお話は、最初から全くの異世界に連れて行ってくれます。
こういうお話を読んだのは久々でした。
それほど怖いイメージはありませんが、内容を説明しろと言われれば、呪者、闇、憎しみ、などの暗い単語をいくつも並べてしまいそうなお話です。
それを救っているのは、小夜と霊狐・野火の想いなのだと思います。
主の為に働くことしか許されず、その命を主に握られている野火。
主に逆らうことはそのまま死を意味します。
それでも、幼い頃に出会った小夜を見殺しにすることなどできず、最後まで小夜を守りました。
そして小夜も野火の為に迷うことない選択をします。
そこにあるのは真っ直ぐな愛情で、その一途な想いがとても切なく優しく描かれていました。
本当に相手を想う気持ちがあるのなら、形にとらわれることなく見守ってあげるのが、もしかしたら一番良いのかもしれませんね。

この物語を振り返ると、私の中に浮かぶのは野を駆ける狐の姿です。
とてもしなやかに世界を駆け、運命に立ち向かい受け入れる、強くて優しい小さな狐。
それは凛とした月の光にとてもよく似合う気がしました。
---------------------------------------------------------------

2008/07/25 00:00 | その他(あ行) | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
ラッシュライフ/伊坂幸太郎
2008年07月16日 (水) | 編集 |
4101250227ラッシュライフ (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社 2005-04

by G-Tools


お金で買えないものはないと思っている画商と新進女性画家。
忍び込んだ家に盗品メモを残す泥棒。
新興宗教の教祖を慕う画家志望の男と、その新興宗教の指導役の男。
それぞれの配偶者を殺す計画をたてるカウンセラーの女性とサッカー選手。
40社連続不採用だった失業中の男。
彼らを繋ぐように存在するバラバラ死体と年老いた野良犬。
それぞれの人生がどこかで交錯し、その果てに待つのは・・・?


++++++++++

読んでいて楽しいお話でしたが、いくつもの話が平行して語られていくので登場人物を記憶するのに必死でした。
群像劇というらしいですが、こういうのはちょっと構えてしまいますね(^^;)
誰と誰がどこで繋がっているのかは覚えていたいと思うから(それでもかなり忘れて後からページをひっくりかえすこと多々)

全く別々の人間の人生が、実は繋がっているというお話です。
それもほとんどが偶然のなせる業。
だから多分当事者達はこの偶然の連鎖を知らないのではないかなー。
簡単に言ってしまえば、世の中狭いね、って感じです(笑)
でもとにかく、それぞれの人生が連鎖を見せる過程がとても見事だと思いました。
仙台駅前に立つ展望台と、そこに貼られている「エッシャー展」のポスター。
それと野良の老犬、バラバラ殺人。
これらが登場人物達の共通項かもしれません。
だんだんとそれぞれを繋ぐ偶然が明らかになっていくので先が気になって仕方ありませんでした。
偶然もここまで繋がると必然かも。
当事者達にとっては良いのか悪いのかは様々だと思いますが・・・。

伊坂さんの作品を読むのはこれで3冊目です。
「重力ピエロ」「グラスホッパー」そして「ラッシュライフ」
どの作品にも犯罪者が存在するのですが、その誰もが凶悪ではないんですね。
で、誰も警察に捕まらないし裁かれない。
ちょっとだけ、それっていいのか?って気がします(^^;)
物語としてはとても面白いのでいっか〜。
そして伊坂さんの作品はリンクしていることも多いと後書きで知りました。
読んだ作品にもリンク部分があったようなのにまるで気付かなかったです。
例えばこの「ラッシュラフ」に出てくる泥棒さんは、「重力ピエロ」に出てきた探偵さんなんだそうで・・・続けて読まなきゃ気付かないよぉ。
---------------------------------------------------------------

2008/07/16 23:03 | 伊坂幸太郎 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
グラスホッパー/伊坂幸太郎
2008年06月26日 (木) | 編集 |
404384901Xグラスホッパー (角川文庫 い 59-1)
伊坂 幸太郎
角川書店 2007-06

by G-Tools


妻を殺した男に復讐をするために、非合法的な商売をしていると知りながら「フロイライン(令嬢)」にもぐりこんだ鈴木。
ところが鈴木の目の前で標的としていた男が車に轢かれてしまった。
どうやら「押し屋」と呼ばれる男の仕業らしい。
鈴木は正体を探るために押し屋の後を追う。

一方、それぞれの思惑を胸に、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの殺し屋・蝉も押し屋を追い始めた。


++++++++++

知り合いでもなければ目的もバラバラな3人の男が、一人の「押し屋」を追いかけるという物語。
最初は本当にバラバラなところからスタートした3人が徐々に近付いていく展開がとても面白かったです。

きっかけは、フロイラインという会社の社長・寺原の長男が「押し屋」に殺されたこと。
この会社は悪どい商売をしている会社で、人殺しなども平気でやります。
業界(殺し屋の間にも業界があるらしい)でも嫌われ者で、恨みを持っている人間はたくさんいました。
誰かが「押し屋」に殺しを依頼したということです。

「鈴木」は元教師ですが、寺原長男に妻を殺され、復讐の為に寺原に近付いていました。
けれど目の前で寺原が押し屋によって殺されてしまい、その正体を突き止めようと押し屋を追いかけます。

「鯨」は自殺専門の殺し屋。
妙な力があるのかわかりませんが、彼に睨まれるとみんな死ぬ気になってしまうらしいです。
けれど死に追いやった人間の幻覚に苦しめられてもいました。
この仕事から足を洗うために全てを清算しようとした鯨は、現在自分にかかわっている人を全て排除しようとします。
そうしていくうちに押し屋に繋がり、過去に押し屋にターゲットを横取りされた経験もあって、鯨は押し屋を殺して終わりにしようと、押し屋を追い始めました。

「蝉」はナイフ使いで、岩西という上司の指示で殺しをしていました。
が、岩西のいいなりになっている自分に疑問を持ち始め、そんな時に寺原長男が押し屋に殺された話を耳にします。
会社をあげて押し屋を探していると知り、自分が押し屋を殺すことで名をあげて岩西から自由になろうとした蝉も押し屋を追い始めました。

3人がそれぞれに押し屋を追い、接近していきます。
鈴木は押し屋と接触して確信を持っているのですが、確認できないまま殺し屋達の殺し合いに巻き込まれていきました。
鈴木以外みんな殺し屋という恐ろしい設定ですが(^^;)彼らがどうやって接点を持ち、誰が勝つのかという妙な好奇心が出てきてしまいます。
この話の設定の仕方はとても面白くて上手だなーと思いました。
私は押し屋さんがお気に入りだったんですが、結局は彼も殺し屋なんですよね。
彼なりの思想があったとしても。

他にも業界の様々な人たちが絶妙に関わってきました。
こんなトコに伏線があったのかーと、最後にびっくりしてみたり(笑)
でも、この物語の中にまっとうな世界の人はいなかったかもしれないと思います。
鈴木だって普通の人だけど、知ってて妙な薬物売りつける仕事してたわけだし・・・。
---------------------------------------------------------------

2008/06/26 22:11 | 伊坂幸太郎 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
オロロ畑でつかまえて/荻原浩
2008年05月12日 (月) | 編集 |
4087473732オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)
荻原 浩
集英社 2001-10

by G-Tools


人口わずか300人。
過疎化に悩む牛穴村の青年団が村おこしに立ち上がった。
彼らがプロデュースに雇ったのは倒産寸前の弱小会社・ユニバーサル広告社。
やぶれかぶれの「牛穴村新発売キャンペーン」が始まる。


++++++++++

過疎化が進む牛穴村。
特にこれといった名産品も特徴もない日本の秘境ともいえるこの村の活性化を図ろうと、青年というにはちょっと年齢の高い青年団が立ち上がります。
そのために彼らが雇ったユニバーサル広告社は、倒産寸前の弱小企業。
田舎の青年達と弱小企業がタッグを組んだ村おこしは、とんでもない企画で幕を開けました。
訛りの強い方言を話す根っからの田舎者青年団と、何とかして倒産を免れようと奮闘する東京の広告社。
無謀な計画でしたが、キャラクター達がそれぞれ個性的なので、次に誰が何をしでかすのかと思うと読むのも楽しかったです。
同時にそれぞれの人生も描かれていて、人間どこで何が起こるかわからないものだというのも感じました。

解説によるとユーモア小説の中に風刺の力もある小説だとか。
この風刺の部分が非常に興味深かったです。

例えば、牛穴村青年団のリーダー・慎一が、広告社に勤めている東京の大学時代の友人を頼って上京します。
慎一は彼を良い友人だと最後まで信じて疑いませんが、傍から見れば田舎者とバカにしていいように利用されただけの学生時代が一目瞭然でした。
今回も言いくるめられて追い返される結果になります。
「いい人だ」は「どうでもよい人、都合のよい人」、「そのうちいつか」は「永遠にこない日」
都会ではこれが当たり前とうのは本当ですよね。
ついでに、大仰な名前の会社ほど実はたいしたことないというのも何だか一理ありそう(^^;)
社長と社員2人アルバイト1人の会社でも“ユニバーサル”ですし。

珍しいニュースにはマスコミが群がり大騒ぎ。
このマスコミに民衆はいともあっさりとのせられます。
でも次のニュースが盛り上がればあっという間に忘れ去る。
カリスマ有名人にはすぐに影響されるし(^^;)
現代社会のお気軽な部分も満載でした。
それをユニバーサル広告社は上手く利用したわけですが。

ま、結果的にはオーライだったのではないでしょうか。
ドタバタしてましたけどね(笑)
彼らが本気で奮闘している姿は気持ちが良かったです。
本気ってのは大事だな〜。

昔から伝わるウツボカズラの花。
湖に住む幻の生物。
そして絶滅したはずの鳥。

日本の田舎には神秘がいっぱいです(笑)
---------------------------------------------------------------

2008/05/12 23:57 | 荻原浩 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
暗黒童話/乙一
2008年05月02日 (金) | 編集 |
4087476952暗黒童話 (集英社文庫)
乙一
集英社 2004-05-20

by G-Tools


事故で記憶と左眼を失ってしまった菜深。
移植手術で死者の眼球の提供を受けたのだが、やがてその眼球は元の持ち主の記憶を再生し始めた。
その記憶を頼りに眼球の持ち主が住んでいた町の訪ねると、そこには悪夢のような事件が待ち受けていた。


++++++++++

長編ホラー小説です。
私は小説を読む時、漠然とですが頭の中に情景を浮かべながら読みます。
特に登場人物がいる場所の風景とか想像するのは好きですね。
その中で人物も動くのですが何故か顔だけが形になりません(笑)
そんな感じで読んでいく私にとっては、この本は想像の限界を越える描写が所々にありました(^^;)
だって最初から信じられない光景が。
運悪く街中で誰かの傘がぶつかり眼を怪我してしまった、というのならわかります。
けれどそれで眼球が落ちて、眼球を落とした本人が自分でその眼球を必死で探してるってありえませんよ普通。
それも雑踏の中。
後から思えばここは物語の始まりであったと同時に伏線でもあったのかもしれません。

とにかくこの事故で菜深は眼球と記憶を失くしてしまいます。
記憶を失くすということはそれまでの人格や人生をも失くすということでした。
眼は移植手術で治すことが出来ましたが記憶はどうにもなりません。
自然に戻るのを待つしかないんです。

やがて移植された左眼が元の持ち主の記憶を再生して菜深に見せるようにまりました。
持ち主の男性の幼い頃からの記憶をランダムに見るうちに菜深は彼が事件に巻き込まれて命を落としたことに気付きました。
誘拐され監禁されている少女の存在を知り、彼女を助ける為に眼球の持ち主だった男性の住んでいた町に向かいます。
そこで出会った人々と過ごす日々は菜深にとって居心地の良いものでしたが、あたらな事件に巻き込まれることになりました。

この事件がとても猟奇的で信じられないようなものです。
かなり非現実的。
それも霊とかそういうものではなく、リアルでグロテスク(--;)
乙一さんのホラーにありがちな表現ではありますけど。
ただ、グロテスクで苦手だなーと思いつつも読めてしまい、そのうち慣れてきてしまうんですよ。
ある意味怖いですけどね、それって(^^;)
その理由は多分、そこに「痛み」というものが存在しないこと。
そして傷つけられた者達は「死」ではなく「生」を選択出来ているということ。
身体を傷つけられたまま監禁された被害者は一人ではありませんが、誰も犯人を恐れてはいないんですよね。
かえって好意的というか・・・変な感じです。
乙一さんの描くホラーにはもしかして恐怖という感情が少ない・・・?

菜深の記憶を失ったという側面のストーリーには感動的な部分が多く含まれますが、殺人事件の方は苦手な人も多いかも。
この犯人は不思議な力の持ち主なんです。
でも人間的に普通とは思えません。
そういう人に限って表面上は誰よりも普通だったりするんですよね。
今回も最後の最後まで犯人がわかりませんでした(私は、ですが)
いつも思うのですが、特殊な力を持った人達はその力をどうして良い方向に利用しないんだろう・・・。


---------------------------------------------------------------

2008/05/02 00:00 | 乙一 | Comment (2) Trackback (0) | Top▲
最後の記憶/綾辻行人
2008年04月23日 (水) | 編集 |
404385501X最後の記憶 (角川文庫 あ 45-1)
綾辻 行人
角川書店 2007-06

by G-Tools


認知症になってしまった波多野森吾の母。
新しいものから少しずつ記憶が消えていき、母に残されたのは幼い頃に経験した「凄まじい恐怖の記憶」のみ。
死を目前にした母をなおも苦しめる「最後の記憶」の正体とは。
森吾は記憶の謎を探し始める。


+++++

どのジャンルにも収まらない小説、という後書きの表現がぴったりの小説でした。
サスペンスでもありホラーでもありファンタジーでもありヒューマンでもあり。
特にファンタジー要素の含まれたシーンは小説の内容と妙にミスマッチな気がしたのですが、その不思議さがかえって印象に残りました。

でも正直、この小説の主人公である波多野森吾という人間が私は苦手です。
普通に接していればどこにでもいそうな好青年、なのかもしれませんが。

森吾の母は現在でいう認知症を患ってしまいます。
それも「蓑浦=レマート症候群」という特殊なもので、白髪になり、新しい記憶から徐々に失っていき、古い記憶、強烈な記憶が最後に残ります。
白い閃光、ショウリョウバッタの羽音、を極度に恐れる母。
母に残されたのは幼い頃殺されかけた恐怖の記憶のみ。

この病気は1/2の確立で遺伝し、早ければ二十代後半であらわれるということでした。
自分もこの病気になるかもしれないという恐怖が森吾の心を満たしていきます。
幼い日の母との記憶、現実に起こっている児童惨殺事件、それらが恐怖心を通じて繋がっていき、森吾の精神バランスを崩してしまいました。
母の恐怖の記憶が幻覚さえうんでしまいます(本当に幻覚だったかは微妙ですけど)

死の恐怖というのはきっと直面した人にしか本当にはわからないのかもしれません。
相当の恐怖でしょうね。
私なんか想像しただけでも怖いです。
健康診断にいっただけでも足が震えますもん。
だから森吾の恐怖も理解出来ないわけではありませんが、恐怖に苦しむ実の母のことよりも、まだ病気だと確定さえしていない自分の恐怖にしか意識のいかない森吾にちょっと違和感がありました。

そして友人の勧めでこの病気が遺伝性のものであるかどうか確かめる為に故郷に向かい、そこで母の記憶の真実にたどり着きます。
このへんかなりファンタジーでかなりホラー。
真実をつきとめた後の森吾の行動は、はっきりいって怖い・・・。

恐怖に怯え続ける母の姿を知りながら、何故その選択に少しも悩まないの?
例えそこが現実とはズレた世界でも、何でそんなに普通にその行動?

等々・・・頭で理屈は理解できるのだけど感情で納得できないものがたくさんでした。
普通もう少しそこに苦悩するだろ、って感じ。
結局この物語の中で森吾が苦悩したのは、自分のことでばかりだった気がします。
母の恐怖の記憶を消してあげられる方法はないかとか、少しくらい考えろよ、と言いたい。

ネタバレを避けたので読んでいない人には意味不明の感想です(^^;)

---------------------------------------------------------------

2008/04/23 22:53 | その他(あ行) | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
失はれる物語/乙一
2008年04月15日 (火) | 編集 |
4044253064失はれる物語 (角川文庫)
乙一
角川書店 2006-06

by G-Tools


交通事故により全身不随の上、五感の全てを奪われた私は闇の中で目覚めた。
唯一残ったのは右腕の皮膚の感覚のみ。
ピアニストの妻はその腕を鍵盤に見立て、日々の想いを演奏で伝えた。

表題作他7編。


++++++++++

タイトルが過去形ではなく現在進行形、あるいは未来形である理由が、読んでいて何となくわかりました。
短編集ですが、どの作品にも切なさが付きまといます。
それは決して不快な感情ではありませんが、大切な人を失う哀しみはやはり辛いものです。

表題作「失はれる物語」は突然の交通事故で全身不随になり、五感も失って病院で目を覚ます男性のお話です。
感覚が残っているのは右腕の皮膚の一部のみ。
けれど脳ははっきりしているので自分の状況は辛すぎるものになりました。
微かに動く指先で妻や医者に意思を伝えることしかできません。
妻は夫の腕を鍵盤に見立てて演奏をしながら日々の様子を語りました。
けれどそれに慣れるうちに妻の感情を読み取れるようになってしまいます。
寝たきりで心臓の寿命が来るのを待つしかない夫。
そんな夫に妻は毎日明るく話しかけ世話をしてくれましたが、それが数年に及べば心身ともに疲れてしまいます。
決して自分を見放さないだろう妻の為に、夫は全てを失う決心をしました。
愛する人の為にした決断。
自分に同じことが出来るかと言ったら多分絶対無理。
怖くて仕方ありません。
とても切ない物語でした。

一番最初に載っていた「Calling You」は、一番印象に残った一番好きな物語です。
ちょっと非現実設定ですが、こういう恋愛物語を久しぶりに読んだ気がしました。
最近多い軽めの恋愛ものってあまり得意ではないので(^^;)
あ、でもこの物語の主人公達は恋人という定義で結ばれる前だったかもしれません。

目の前にある死に震えながら、それでも相手を守る為に嘘をつき続け、運命を捻じ曲げようとする女の子。
自らの運命を知りながら逃げることを拒否し、彼女を守るために飛び込んでくる男の子。
ここまで相手を想いあう二人の運命を変えてあげたかった・・・と、思う。
こういう相手に出会えたことが羨ましいのですが、だからこそ失う悲しみの大きさを思うと切ないです。
私は「別れ」というのが怖いから(TT)

後書きの代わりに書き下ろされたという物語は、普通に小説なのにちゃんと後書きだと思えるのが不思議でした。
乙一さんの才能でしょうね。
言葉にするのはすごく難しいのですが、自分が創り出した人物から何かを教わって前に進んでいく、というイメージが残りました。
自分もこうなれたら・・・いいのかな(笑)?
それはちょっとまだよくわかりませんが。


---------------------------------------------------------------

2008/04/15 23:59 | 乙一 | Comment (2) Trackback (0) | Top▲
思いわずらうことなく愉しく生きよ/江國香織
2008年03月19日 (水) | 編集 |
4334742629思いわずらうことなく愉しく生きよ (光文社文庫 え 8-1)
江國 香織
光文社 2007-06

by G-Tools


長女・麻子は結婚7年目。
夫の暴力という問題を抱えた複雑な夫婦関係にある。
次女・治子は仕事に恋に自分の意思を貫く外資系企業のキャリアウーマン。
三女・育子は余計な幻想を抱かず、友情と肉体が他人との接点になっている。
それぞれに問題を抱えた三姉妹は、共に育った時間と記憶で繋がっており、彼女達はとてものびやかに生きていた。


++++++++++

何冊も読んだわけではありませんが、江國さんの作品はこんな感じが多いのでしょうか?
特に何か大きな事件が起こる訳ではなく、3人の女性の日常生活をそれぞれに描いている内容です。
個人レベルで問題は抱えていますが、恋と仕事に普通に生きている女性達。
ただ少し彼女達は人とは違う個性を持っているかもしれません。
彼女達の言葉で言うなら、のびやかに生きている・・・かな。

長女の麻子は専業主婦。
夫から暴力を受けていますが、その夫は暴力を振るった後は反省したり泣き出したり。
独占欲が強すぎる、ある意味押さえがきかない男。
けれどそんな関係でもお互いが必要で、夫は麻子がいなくなることを恐れているし、麻子は暴力を受けても夫といることが幸せだと考えています。

次女の治子はキャリアウーマン。
仕事も出来るし男にもモテます。
心から愛している同棲中の恋人がいますが結婚に必要性を感じていないのでプロポーズは拒否してます。
自分の思うままに行動し、自分の主義を曲げることはしません。

三女の育子は・・・ちょっと不思議な感じのコでした。
人との付き合いが広く浅くという感じで、一見とてもドライなのですがその実とても面倒見のよい優しい女性です。

そんな三姉妹はとても仲が良くて、姉妹に何かあればすぐに駆けつけるし助けてくれる心強い味方です。
性格は違っても相手をちゃんと理解できるように思いました。

この三姉妹が、それぞれ男を通して成長していきます。
女性の持つ強さを描いているような感じがしました。
当たり前の日常生活の中で、日々何かを探し奮闘しているのかもしれませんね。
この本の中に出てくる男性達はみんな女性より弱々しいです。
治子によると、いざという時に役にはたたないけれどいるだけで心強い存在なのだそう(^^;)
三姉妹はそれぞれ新しい恋や生活に踏み切りましたが、それぞれに関わった男性達はその後どうなったやら。

でもとりあえず、私にとっては「ふ〜ん」っていう感じでした。
特につまらなくもなく、だからといってどこかに感動したとか共感したとかいう記憶も残ってません。
こんな人生もあるのね、くらいでした(^^;)
---------------------------------------------------------------

2008/03/19 23:22 | 江國香織 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲