2006年10月26日 (木) | 編集 |
![]() | 博士の愛した数式 小川 洋子 新潮社 2005-11-26 by G-Tools |
交通事故が原因で、80分しか記憶することが出来なくなってしまった数学の博士。
その博士の元にやってきた家政婦と10歳の息子。
毎日初対面の挨拶を交わし、その度に靴のサイズや誕生日を尋ねる。
それが博士の言葉でもあった。
そんな毎日の中で、博士の操る数字に驚き、阪神タイガースに夢中になり、3人の時間は切なくも暖かく流れていく。
++++++++++
読み始めてすぐに、この本が好きになりました。
何だかとても暖かくて優しい気持ちになれる物語です。
17年前、事故で頭を打った博士は脳に傷を負い、80分しか記憶を留めることが出来なくなりました。
博士の記憶は17年前に止まり、そこから先に進むことはありません。
80分たつと消えてしまうのです。
それを補う為に、大事なことはメモにして自分の背広にピンでとめています。
その博士の元に家政婦としてやってきた「私」
初対面の挨拶かわりに訊かれるのは靴のサイズや誕生日。
数学者の博士にとって数字は言葉のようなものでした。
数字と子供をこよなく愛する博士は、家政婦の息子も呼び寄せ「ルート」と呼んで可愛がります。
博士と家政婦とその息子「ルート」の3人で過ごす時間は穏やかに濃密に過ぎていきました。
博士が80分以上の記憶を蓄積できないという事実はいつもそこにあるのに、3人の空気は穏やかで、幸せな物語だとさえ感じてしまいます。
だから目を覚ますたびに自分の記憶が80分しかもたないという事実に打ちのめされる博士を知った時には本当に切なくなりました。
ある時から記憶がなくなり、新しい記憶が残らないって、一体どういうことなのだろう、と思ってしまいます。
博士は毎日、どんな感情の中で過ごしているのだろう、って。
そして10歳のルート少年。
人の心にすごく敏感で優しい子です。
どんな数字でも嫌がらずに自分の中にかくまってやる、実に寛大な記号「ルート」
博士はこう言って彼に「ルート」と名付けました。
すごくぴったりのニックネームです。
「私」が博士の家政婦でなくなり、ルートがどんなに成長して、博士の記憶がないままでも、3人の絆は切れることはありませんでした。
いつの間にか博士より大きくなったルートが、博士の肩を抱くシーンがとても印象に残っています。
嬉しいのか泣きたいのかわからないけど、とても良いラストだったと思います。
博士のことに関しては気になる部分がいっぱい残っていますが、きっとそれはそのままで良いのかもしれません。
当然のことながら数式もいっぱい出てくる物語です。
私は残念ながら数学は嫌いです。
素数だ約数だという基本的なものまですっかり忘れていて、この本を読んで思い出したくらい(笑)
数式の意味を理解するのに何度も読み返したし、正直とうとうわからない式もありました・・・。
でも、羅列される長い数字の1字たりとも抜かしてしまうのは勿体なくて、はじからはじまで全部読みました。
嫌いな数学が本当にエレガンスに見えてきたから不思議です(^^)
お勧めです。
まだ読んだことのない方は是非。
---------------------------------------------------------------
2006/10/26 23:21 | 小川洋子 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
2006/10/26 23:21 | 小川洋子 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
2006年10月21日 (土) | 編集 |
![]() | 停電の夜に ジュンパ ラヒリ Jhumpa Lahiri 小川 高義 新潮社 2003-02 by G-Tools |
工事の為に5日間、毎晩1時間だけ停電することになった。
すれ違い始めた夫婦はロウソクをともし、停電の間にお互いの隠し事を打ち明けあう。
少しずつ二人の溝が埋まるようになり、次の日は何を話そうかと停電を心待ちにするようになるが・・・。
表題作他、全9編。
++++++++++
タイトルに惹かれて手にした本です。
KinKi Kidsのアルバムの中に「停電の夜には」という曲があるので(笑)
この本の作者はインド系の方らしいです。
だから、インドで生まれた人間がアメリカに渡って生活している、という設定の短編が多かったですね。
そういう背景を持ついくつかの夫婦の物語、という気もしましたが・・・。
特に大事件が起こるでもなく、普通の人々の普通の生活が描かれていました。
独立戦争とか色々背景にはあったのですがそれがメインではないので詳しい描写もなく、歴史にも地理にも疎い私にはちょっと意味不明な部分が多かったです。
実は感想を書こうにもよく理解できなかったので書きようがないというのが本音です(^^;)
その国についての知識がない者にはわかりにくい内容なので、正直あまり印象に残るような作品ではなかったなぁ。
でも、ピュリツァー賞などの文学賞をたくさんとっている人気作品らしいです。
「停電の夜に」
停電の夜というのは、とても不思議なイメージがあります。
誰かと一緒の暗闇は怖いというよりワクワクしました。
この物語の夫婦はある時期からすれ違うようになり、喧嘩をするわけではないのですがぎこちない毎日を過ごしています。
それが停電の夜の打ち明け話をきっかけに少しずつ関係が修復されていきました。
こういうのって素敵だな、と思いました。
やっぱり停電の夜って何か不思議な力があるのかもしれません。
でも最後は、ええっ?って感じでした。
女って、したたかだな(^^;)
現実ってシビア〜。
---------------------------------------------------------------
2006/10/21 00:00 | 海外の作家 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
2006/10/21 00:00 | 海外の作家 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
2006年10月14日 (土) | 編集 |
![]() | 都市伝説セピア 朱川 湊人 文藝春秋 2006-04 by G-Tools |
祭りの見世物小屋で河童の氷漬けを見た少年の物語「アイスマン」
事故死した親友を助ける為にタイムスリップを繰り返す「昨日公園」
都市伝説に惑わされ、殺人鬼となる「フクロウ男」
会ったことさえなく、既に死んだ男に恋し続ける「死者恋」
罪悪感を持つ相手の姿が見えてしまう「月の石」
人間の心の怖さや哀しさを描いた5編の物語。
++++++++++
どの物語もとても懐かしい感じがしました。
インターネットというツールが出てくるお話もあるのに、やっぱりどこかノスタルジックなんです。
都市伝説というのは、私の周りにもありました。
子供の頃の話ですけどね。
もうあまり覚えていないのですが、「口裂け女」は有名でした。
「トイレの花子さん」もありましたね。
絶対嘘だと思いつつも何故か怖かった(笑)
この本を読んだらそんなことを思い出しました。
子供の頃って、こういう怖い話も嘘っぽい話も、結構それなりにリアルでしたよね。
今思い出してみれば、子供の頃というのはとても不思議な時間が流れていた気がします。
全くの余談ですが、社会に出てから聞いた都市伝説に「100キロババア」というのがありました。
高速道路を時速100キロ以上出して走るとおばあさんが追いかけてくるという・・・(^^;)
怖いというより、一度お会いしたいので走ってみようか、なんて友達と笑ったものです。
都市伝説ってそんな感じですよね。
怖いけどちょっと経験したくもあるような・・・。
この本の中の5編の中で、どれが好きかと言われると私は悩みます。
正直どれもインパクトは薄かったんですよね。
だいたいのストーリーは何となく途中でわかってしまうし。
「フクロウ男」だけはちょっと驚く結末だった・・・かな(^^;)?
でも、これといったインパクトもない代わりに、朱川さんの他の作品も読んでみようかな、という気にはなりました。
社会の陰に、こんな世界もあるのかもしれない、という身近さを感じたような気がします。
***
私の手元には積読本がたくさんあって、妙なトコに拘る私は律儀に購入順に読んでいます。
でもこの「都市伝説セピア」は先週購入し、先に読んでしまいました。
目的があって買った本だったからです。
今の方がいいかな〜と。
先日、フジテレビで放送された「世にも奇妙な物語」というSPドラマの中の1編として「昨日公園」がありました。
見終ってから原作があるのだと知り、読みたくなって早々に購入したものです。
大筋は同じものの、登場人物の設定のあまりの違いにちょっと驚きました。
原作を読んでからこのドラマを楽しみに見た方は面食らったかもしれませんねー。
何より主人公が原作では小学生なのに、ドラマでは大学生ですもん。
ただ、私個人としては、小学生より大学生の方がしっくりきました。
陽介が最後に選んだ苦しい決断。
親友の為に自分はどうしてやれるのか。
このあたりの流れが、小学生ではちょっと違和感があるような気がしたので。
ちなみに、私はドラマを先に見たのでこういう感想になっています。
そしてドラマで主役の陽介を演じた堂本光一さんの大ファンでもあります。
そんなつもりはなくても、多分無意識に多少贔屓目には見ているでしょう(^^;)
でも、どんなに好きな人が演じていても滅多にドラマは2度見しない私がこのお話は何回も見ました。
何度見ても最後は切なくなりました。
---------------------------------------------------------------
2006/10/14 23:03 | その他(さ行) | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
2006/10/14 23:03 | その他(さ行) | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
2006年10月11日 (水) | 編集 |
![]() | オペラ座の怪人 ガストン・ルルー 日影 丈吉 早川書房 1989-05 by G-Tools |
オペラ座で起こる怪事件の数々。
大道具主任の首吊り死体が発見されたり、シャンデリアが落下したり・・・。
それらはオペラ座に住む怪人の仕業だと噂されていた。
ある日、歌姫・クリスチーヌが舞台上から消失するという事件が起こる。
オペラ座の怪人の正体とは?
++++++++++
とても有名なタイトルなので、聞いたことのない人はいないのでは?
もちろん私もよーく知っているのですが、実は読んだことはありませんでした。
でも、推理小説とかでよくモチーフにされるので知っているような気になってたんですよね。
パリのオペラ座の地下には醜い姿を仮面で隠した怪人が住んでいて、歌姫・クリスチーヌと恋に落ちる・・・。
ラブストーリーだと思っていたわけではありませんが、読んでみると、何だ、そうだったのか〜、と思ってしまいました。
実際に行ったことはありませんが、オペラ座というのは本当に不思議な建造物らしいですね。
その地下に広大な湖があるというのも、テレビ番組で紹介されているのを見た記憶があります。
建物の地下に湖というだけでも驚きですが、それが証明されてしまえば、そこに人が住んでいたと言われても意外と納得してしまいそうです。
で、読み終わった頃にはこれが小説だということは忘れてしまいました。
作者側から言えばノンフィクション、でも信じる信じないはご自由に、みたいな感覚です。
読むのに時間はかかりましたが(読み難かったというよりは、忙しかったり体調崩したりで)満足感が残りました。
これで私も「オペラ座の怪人」を知ったぞ、という感じ(笑)
この怪人、殺人やら誘拐やら、色々やらかします。
でも私は憎むことが出来ませんでした。
最後はホントに哀しかったです。
オペラ座の地下にいたこの怪人は、やっぱり人間なのでしょうか・・・?
あ、発見がもうひとつ。
「ファントム」というのが怪人の名前だとずっと思っていたのですが、そうではないんですね(恥)
怪人の名はエリック。
ファントムというのは怪人の意味だったんですね〜。
こうやって小さなことでも知識が増えていくのも、読書の楽しみの一つかもしれません。
で、またどこかの番組でオペラ座の特集でもやってくれないかな〜。
この物語を読んだ後なら、更に楽しめそうな気がします。
是非見てみたいし。
---------------------------------------------------------------
2006/10/11 00:00 | 海外の作家 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
2006/10/11 00:00 | 海外の作家 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
| ホーム |



