読書の記録と雑談
最後の記憶/綾辻行人
2008年04月23日 (水) | 編集 |
404385501X最後の記憶 (角川文庫 あ 45-1)
綾辻 行人
角川書店 2007-06

by G-Tools


認知症になってしまった波多野森吾の母。
新しいものから少しずつ記憶が消えていき、母に残されたのは幼い頃に経験した「凄まじい恐怖の記憶」のみ。
死を目前にした母をなおも苦しめる「最後の記憶」の正体とは。
森吾は記憶の謎を探し始める。


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どのジャンルにも収まらない小説、という後書きの表現がぴったりの小説でした。
サスペンスでもありホラーでもありファンタジーでもありヒューマンでもあり。
特にファンタジー要素の含まれたシーンは小説の内容と妙にミスマッチな気がしたのですが、その不思議さがかえって印象に残りました。

でも正直、この小説の主人公である波多野森吾という人間が私は苦手です。
普通に接していればどこにでもいそうな好青年、なのかもしれませんが。

森吾の母は現在でいう認知症を患ってしまいます。
それも「蓑浦=レマート症候群」という特殊なもので、白髪になり、新しい記憶から徐々に失っていき、古い記憶、強烈な記憶が最後に残ります。
白い閃光、ショウリョウバッタの羽音、を極度に恐れる母。
母に残されたのは幼い頃殺されかけた恐怖の記憶のみ。

この病気は1/2の確立で遺伝し、早ければ二十代後半であらわれるということでした。
自分もこの病気になるかもしれないという恐怖が森吾の心を満たしていきます。
幼い日の母との記憶、現実に起こっている児童惨殺事件、それらが恐怖心を通じて繋がっていき、森吾の精神バランスを崩してしまいました。
母の恐怖の記憶が幻覚さえうんでしまいます(本当に幻覚だったかは微妙ですけど)

死の恐怖というのはきっと直面した人にしか本当にはわからないのかもしれません。
相当の恐怖でしょうね。
私なんか想像しただけでも怖いです。
健康診断にいっただけでも足が震えますもん。
だから森吾の恐怖も理解出来ないわけではありませんが、恐怖に苦しむ実の母のことよりも、まだ病気だと確定さえしていない自分の恐怖にしか意識のいかない森吾にちょっと違和感がありました。

そして友人の勧めでこの病気が遺伝性のものであるかどうか確かめる為に故郷に向かい、そこで母の記憶の真実にたどり着きます。
このへんかなりファンタジーでかなりホラー。
真実をつきとめた後の森吾の行動は、はっきりいって怖い・・・。

恐怖に怯え続ける母の姿を知りながら、何故その選択に少しも悩まないの?
例えそこが現実とはズレた世界でも、何でそんなに普通にその行動?

等々・・・頭で理屈は理解できるのだけど感情で納得できないものがたくさんでした。
普通もう少しそこに苦悩するだろ、って感じ。
結局この物語の中で森吾が苦悩したのは、自分のことでばかりだった気がします。
母の恐怖の記憶を消してあげられる方法はないかとか、少しくらい考えろよ、と言いたい。

ネタバレを避けたので読んでいない人には意味不明の感想です(^^;)

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2008/04/23 22:53 | その他(あ行) | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
失はれる物語/乙一
2008年04月15日 (火) | 編集 |
4044253064失はれる物語 (角川文庫)
乙一
角川書店 2006-06

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交通事故により全身不随の上、五感の全てを奪われた私は闇の中で目覚めた。
唯一残ったのは右腕の皮膚の感覚のみ。
ピアニストの妻はその腕を鍵盤に見立て、日々の想いを演奏で伝えた。

表題作他7編。


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タイトルが過去形ではなく現在進行形、あるいは未来形である理由が、読んでいて何となくわかりました。
短編集ですが、どの作品にも切なさが付きまといます。
それは決して不快な感情ではありませんが、大切な人を失う哀しみはやはり辛いものです。

表題作「失はれる物語」は突然の交通事故で全身不随になり、五感も失って病院で目を覚ます男性のお話です。
感覚が残っているのは右腕の皮膚の一部のみ。
けれど脳ははっきりしているので自分の状況は辛すぎるものになりました。
微かに動く指先で妻や医者に意思を伝えることしかできません。
妻は夫の腕を鍵盤に見立てて演奏をしながら日々の様子を語りました。
けれどそれに慣れるうちに妻の感情を読み取れるようになってしまいます。
寝たきりで心臓の寿命が来るのを待つしかない夫。
そんな夫に妻は毎日明るく話しかけ世話をしてくれましたが、それが数年に及べば心身ともに疲れてしまいます。
決して自分を見放さないだろう妻の為に、夫は全てを失う決心をしました。
愛する人の為にした決断。
自分に同じことが出来るかと言ったら多分絶対無理。
怖くて仕方ありません。
とても切ない物語でした。

一番最初に載っていた「Calling You」は、一番印象に残った一番好きな物語です。
ちょっと非現実設定ですが、こういう恋愛物語を久しぶりに読んだ気がしました。
最近多い軽めの恋愛ものってあまり得意ではないので(^^;)
あ、でもこの物語の主人公達は恋人という定義で結ばれる前だったかもしれません。

目の前にある死に震えながら、それでも相手を守る為に嘘をつき続け、運命を捻じ曲げようとする女の子。
自らの運命を知りながら逃げることを拒否し、彼女を守るために飛び込んでくる男の子。
ここまで相手を想いあう二人の運命を変えてあげたかった・・・と、思う。
こういう相手に出会えたことが羨ましいのですが、だからこそ失う悲しみの大きさを思うと切ないです。
私は「別れ」というのが怖いから(TT)

後書きの代わりに書き下ろされたという物語は、普通に小説なのにちゃんと後書きだと思えるのが不思議でした。
乙一さんの才能でしょうね。
言葉にするのはすごく難しいのですが、自分が創り出した人物から何かを教わって前に進んでいく、というイメージが残りました。
自分もこうなれたら・・・いいのかな(笑)?
それはちょっとまだよくわかりませんが。


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2008/04/15 23:59 | 乙一 | Comment (2) Trackback (0) | Top▲
地球から来た男/星新一
2008年04月07日 (月) | 編集 |
4041303222地球から来た男 (角川文庫 ほ 3-7)
星 新一
角川書店 2007-06

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産業スパイとしてとある研究所にもぐりこんだ男。
しかしあっけなく捕まってしまい、開発途中で放置されてたテレポーテーション装置で地球外に追放されてしまった。
追放された先は地球そっくりで・・・。

奇妙な運命に翻弄される男達のショートショート集。


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星新一さんの作品は中学高校の頃、何冊か読んだ記憶があります。
ショートショートなので読みやすかったし、内容がとても斬新だという印象を持っていました。
その印象は、あれから何年も経った今読んでもあまり変わりません。
例えばこの本も(文庫の?)初版は昭和58年。
それなのにあまり古臭い感じがしないんですよね。

星さんの作品は近未来をえがいたSFのようでもあり、社会風刺のようでもあり、とにかく色んな視点からストーリーを作っている感じがします。
そのくせ悪魔とか死神とかの古風なイメージのものも登場します。
バラエティに富んでいるといえるのかもしれませんね(笑)

だけどいつも心の隅で思うのは、少し怖いな、ということ。
もちろんそうでないお話もたくさんあるのですが、日々進歩していく人間社会の落とし穴みないたものや、合理主義に果てにやってくるもの、そんなものを見せられている気分。
夢のあるお話のようでいて、どこかに寂しさを残していたり。
不思議ですよね。
ロマンティックでリアルなショートショートです。
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2008/04/07 23:24 | その他(は行) | Comment (0) Trackback (0) | Top▲