2008年04月15日 (火) | 編集 |
![]() | 失はれる物語 (角川文庫) 乙一 角川書店 2006-06 by G-Tools |
交通事故により全身不随の上、五感の全てを奪われた私は闇の中で目覚めた。
唯一残ったのは右腕の皮膚の感覚のみ。
ピアニストの妻はその腕を鍵盤に見立て、日々の想いを演奏で伝えた。
表題作他7編。
++++++++++
タイトルが過去形ではなく現在進行形、あるいは未来形である理由が、読んでいて何となくわかりました。
短編集ですが、どの作品にも切なさが付きまといます。
それは決して不快な感情ではありませんが、大切な人を失う哀しみはやはり辛いものです。
表題作「失はれる物語」は突然の交通事故で全身不随になり、五感も失って病院で目を覚ます男性のお話です。
感覚が残っているのは右腕の皮膚の一部のみ。
けれど脳ははっきりしているので自分の状況は辛すぎるものになりました。
微かに動く指先で妻や医者に意思を伝えることしかできません。
妻は夫の腕を鍵盤に見立てて演奏をしながら日々の様子を語りました。
けれどそれに慣れるうちに妻の感情を読み取れるようになってしまいます。
寝たきりで心臓の寿命が来るのを待つしかない夫。
そんな夫に妻は毎日明るく話しかけ世話をしてくれましたが、それが数年に及べば心身ともに疲れてしまいます。
決して自分を見放さないだろう妻の為に、夫は全てを失う決心をしました。
愛する人の為にした決断。
自分に同じことが出来るかと言ったら多分絶対無理。
怖くて仕方ありません。
とても切ない物語でした。
一番最初に載っていた「Calling You」は、一番印象に残った一番好きな物語です。
ちょっと非現実設定ですが、こういう恋愛物語を久しぶりに読んだ気がしました。
最近多い軽めの恋愛ものってあまり得意ではないので(^^;)
あ、でもこの物語の主人公達は恋人という定義で結ばれる前だったかもしれません。
目の前にある死に震えながら、それでも相手を守る為に嘘をつき続け、運命を捻じ曲げようとする女の子。
自らの運命を知りながら逃げることを拒否し、彼女を守るために飛び込んでくる男の子。
ここまで相手を想いあう二人の運命を変えてあげたかった・・・と、思う。
こういう相手に出会えたことが羨ましいのですが、だからこそ失う悲しみの大きさを思うと切ないです。
私は「別れ」というのが怖いから(TT)
後書きの代わりに書き下ろされたという物語は、普通に小説なのにちゃんと後書きだと思えるのが不思議でした。
乙一さんの才能でしょうね。
言葉にするのはすごく難しいのですが、自分が創り出した人物から何かを教わって前に進んでいく、というイメージが残りました。
自分もこうなれたら・・・いいのかな(笑)?
それはちょっとまだよくわかりませんが。
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2008/04/15 23:59 | 乙一 | Comment (2) Trackback (0) | Top▲
2008/04/15 23:59 | 乙一 | Comment (2) Trackback (0) | Top▲
この記事へのコメント
乙一さんの不思議な世界が何となく分かります。
意識はあるけど動けない状況設定って
結構好きな作家さんですよね(笑)。
とってもグロテスクなんだけど、不幸な感じがしない
才能豊かな方ですね。
意識はあるけど動けない状況設定って
結構好きな作家さんですよね(笑)。
とってもグロテスクなんだけど、不幸な感じがしない
才能豊かな方ですね。
2008/04/16(水) 20:38:38 | URL | ともこ #I2cSjMIM[ 編集]
>ともこさん
グロテスクな表現に気付いてしまうと本当に不気味なのですが、それを忘れてしまうくらい内容は透明だったりするんですよね。
独特の世界があるなーと思います。
この本、お勧めですよ(^^)
グロテスクな表現に気付いてしまうと本当に不気味なのですが、それを忘れてしまうくらい内容は透明だったりするんですよね。
独特の世界があるなーと思います。
この本、お勧めですよ(^^)
2008/04/17(木) 00:29:43 | URL | 月帆 #oEKVtF.6[ 編集]
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